熊本県との県境に位置する大分県玖珠郡玖珠町。名勝耶馬渓と阿蘇外輪山に挟まれた山間部にあるのどかな町は「童話の里」として知られています。玖珠町出身の日本の児童文学者『久留島武彦』に因んで、昔話の登場人物のキャラをよく見かけます。
ノスタルジックとメルヘンにあふれた街並み、そして一風変わった山の形に心奪われます。まるで巨大な切株に似た山の名は「伐株(きりかぶ)山」。興味をそそる標高684mの山の頂には、かつてお寺と山城がありました。早速行ってみましょう。
伐株山城跡
筑後川沿いに走る国道210号線には「伐株山山頂へ」の案内標識が何箇所かあり、そこから町道に入り伐株山の下へ向かって進みます。
向かってるつもりでも、離れて行ってしまう道もありますので、遠ざかっていると感じたら引きかえして伐株山の方へ進みましょう。山に近づくと標識が増えて来ます。
切株山のすぐ周りには片側一車線の舗装した道路があり、とても走りやすくなっています。
山頂へ向かう途中にはオートキャンプ場もあります。ここら辺から道路は少し狭くなりますが、普通車での離合も心配なくスイスイ頂上まで走れます。
山頂の手前には、お地蔵様が沢山並んでいる史跡「針の耳」。これは「むかし伐株山の山頂には、高勝寺というお寺があり、この険しい山道はかつて修行僧や信者が往来していました。この道筋には自然にできた岩盤に多くの小さな穴があり、人々はこの穴を見て、いつしか「針の耳」(糸を通すためにある針の穴の事)と呼ぶ様になりました。」
頂上には駐車場が20台分あります。休日でもお昼時以外は満車になる事はないでしょう。来る前に飲み物やお弁当を持って向かうといいですよ。この日はGWでカフェのキッチンカーが1台来ていました。
なんと素晴らしい光景でしょう。一面に綺麗な草原が広がっています。見下ろす玖珠の街並みの先には耶馬渓の山々が連なっています。
解説板などもあり、観光地として綺麗に整備されています。休憩所やトイレもあります。
子どもの日シーズンなので、至る所に鯉のぼりが泳いでいます。手前の休憩所の奥に見えるガラス張りの建物は休憩室で、中にはテーブルと椅子があります。山頂は平らで障害物もあまり無く、風が強く吹く日もありますので安心です。
切株のへりに行ってみても、視界を遮る木々が無く素晴らしい景色が楽しめます。飲み物とお弁当を持って来て、食べている方が多かったです。少し離れていますがトイレもあります。
「ハイジのブランコ」と呼ばれる天空のブランコが、全部で6つあります。アニメのシーンを思い浮かべ懐かしむ方も多いことでしょう。
伐株山城の歴史
【伝承:玖珠町のシンボル伐株山は、その山容から、大きなクスノキが倒れたあとの切株が山となった伝説がある。山頂にはもともと「こうしょうじ高勝寺」という山岳寺院があったと言われ、現在「テラドコロ」と呼ばれる付近に寺が展開されていたと考えられている。】
もともと、ここには「高勝寺」というお寺がありました。鎌倉時代末期の南北朝時代、玖珠郡は肥後の菊池氏が率いる九州の南朝方の最大拠点かつ最前線でした。その頃、お寺も防衛のため改修され城郭化されたと考えられています。
延元元年/建武三年(1336)三月十三日、北朝側の足利尊氏は一色頼行にこの城を攻めさせました。大友氏康、清原一族の野上顕直、綾垣政明、野上資頼、帆足清六衛門、大神一族の稙田寂円などが援軍として参加。城に籠もった側は高勝寺の僧たち、家督を継げなかった大友氏康の兄貞順、清原一族の小田顕成、大神一族の敷戸孫次郎、魚返宰相房、如来弁阿闍梨など。
この「伐株山合戦」は大友、清原、大神一族が、南朝・北朝に別れて争った形となりました。天然の要害と僧たちによる必死の抵抗で、足利側は攻められず戦いは膠着状態に。しかし、長引く戦闘に次第に食糧不足になると籠城側の抵抗も弱まり、十月十二日ついに足利勢の総攻撃で伐株山城(高勝寺之城)は落城しました。
延元三年(1338)菊池氏は大友勢に勝利し再び伐株山城を奪回しましたが、文中三年(1378)には再び奪い返され、南朝の豊後における拠点は消滅しました。戦国時代の天正十四年(1586)十二月末、今度は大友軍を駆逐するため北上する島津軍に伐株山城は包囲されました。写真:菊池武光公像(菊池市)
籠城側の野上兵庫助鎮清などが抵抗したこの戦でも、天然の要害は威力を発揮しましたが、尾根筋を守る山田伝九郎が島津軍に内応して城中に火をかけた為に落城。島津軍の勝利となり、残党は北方に位置する角牟礼城に逃れました。それ以降、伐株山城は城として使われる事はなくなりました。角牟礼城に関してはこちらへ
御城印
JR九州豊後森駅前通り沿いにある「くすまちメルサンホール」の受付で御城印が販売されています。
伐株山城跡と角牟礼城跡もあります。格1枚300円。
家紋はオリジナルだそうです。
JR九州 豊後森駅
JR九州の久留米と大分を結ぶ久大本線の途中駅。ノスタルジックを感じる駅舎で、駅ピアノもあります。特急ゆふいんの森と九州横断特急が通ります。
豊後森機関車公園
豊後森駅から歩いて10分ほどの場所にある「豊後森機関車公園」。かつて使用されていた蒸気機関車が展示されていて夏休み期間はライトアップも実施しています。すぐ隣には機関庫ミュージアムもあり、日曜日にはミニトレインも走っています。
鮮やかな緑色の特急車両『ゆふいんの森』が有名です。