【農業土木施設】馬場楠井手の鼻ぐり/熊本県菊陽町

 熊本県菊陽町にある農業土木施設「馬場井手の鼻ぐり」。世界有数のカルデラを誇る阿蘇山から熊本市街を通り有明海へ流れる一級河川の白川。古来より生活用水から農業用水古来に利用され県民の生活になくてはならない川ですが、一方で暴れ川とも恐れられ特に火山灰を含んだ土砂の堆積は住民たちを悩まされてきました。

慶長時代、肥後熊本に入られた加藤清正公は熊本城を築城し国づくりを手がける一方で、難事業の白川流域の整備に取り掛かりました。肥後特有の問題、水と一緒に流れてくるヨナと呼ばれる火山灰を含む重い堆積物。現在のような重機が無い時代、手作業での除去は到底無理。途中に堅い岩盤のある小高い山も障害と二つの問題を抱えてました。

そこで考え出されたのは、堅い岩盤に穴を開け人工的に強い水流を作りヨナを押し出す方法。偶然なのか、この方法で二つの問題を解決しました。現在でもその姿を見ることができる「鼻ぐり井出公園」を訪れました。

柵の向こうに大きく突起したものが並んでいる水路が見えます。雑草も刈り取られていて、見学できます。

小さく並んだ運河の様になっており川の水が小さな渦を巻いて流れているのがわかります。結構大きいです。石垣やコンクリート、近代的なものは無くて全て自然を生かされています。

側にある絵が掲示されていましたが、この様に各ブロックで渦巻きの水流を起こしながら流れているイメージですね。子供達にも分かりやすいです。

各ブロックは下部の穴で互いに繋がっており、渦の勢いでヨナが底に堆積させることなく押し流していく仕組みが分かります。攪拌させる工業機器は現代にもありますが、こうした自然の力を利用した水路が400年前に作られていたのは驚きです。

 「鼻ぐり」とは牛の鼻輪の事で、岩盤に高さ2メートルのトンネル状の穴をノミなどを使った手作業で掘られています。相当な労力だったことでしょう。くるくる回った水流に乗ってヨナが堆積せず横にある取水口から大江渡鹿地区の取水口まで12キロ続いていたとされています。

こちらはそばにある模型です。この取水により田畑が整備され以前より約3倍に収穫量が増えました。全国でも珍しいこの施設は平成30年度、世界かんがい遺産に登録されました。加藤清正公は、その他にも土木事業を行い「土木の神様」と言われる様になりました。

 慶長十三年(1608)に完成した鼻ぐりでしたが、江戸時代末期この仕組みを知らない役人たちによって一部が破壊されて五十箇所へ減った後、さらに自然災害などで壊れてしまったものの、現在でもこうして利用されています。

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